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香港トレッキング⑤ 〜イギリス人と歩くこと〜

8/23/2018

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前回「香港トレッキング④ ~終戦の日に~」を投稿したあと、友人や見知らぬ人から「よかったよ!」と声をかけてもらったり、「いいね!」をたくさん押してもらった(ありがとう~!!)。それがこんなにも嬉しいものなのか~、というくらい嬉しくて、この1週間はそわそわと落ちつかない気持ちで過ごした。
と同時にわたしの中にむくむく湧き起こってきたのは、「次もいいものを書きたい」「よかったよ!と言ってもらえるものを書きたい」という願望。。。笑 

自分の存在価値を自分以外の誰かにアピールしたいとき、その方法は人それぞれいろいろある。「アピールする必要なし!そもそも価値があるんだから。」という人もいると思うのだが、わたしの場合「アピールしないと自分の価値はわかってもらえない」と思い込んでいたところがあって、「よくやったね。」「すごいね!」と「言われそうなことをする」という方法を、ごく小さいころから選んできたようだ。
気がついたら無意識のうちに、自分が本当にやりたいことよりも周囲に褒められたり、認められることをすることが増え、そのために一生懸命がんばる子になっていたところがある。(もちろん全部ではないし、特別悪いことでもない。ツマラナイけどね。)

「次もよかったよ!と言われるものを書きたい」が自分の中に出てきたとき、ふと立ちどまった。
わたしが一番大事にしたいことは、そこか?、と。
こうして書くことそのものが楽しいのだから、書いたものが誰かに伝わって喜んでもらえたとしても、それは幸せのオマケにすぎない。なのに、ついついわたしは「オマケ」ばかりを追いかけようとする傾向があるらしい。
自分が書き表したかった思いが誰かに届いた!、という体験と嬉しい気持ちは胸いっぱいに受けとって、わたしはわたしのまま、とらわれることなく書こう。今はそんな気分。
すなわち毎回ヒットは打てないけど、楽しんで書くのでよろしくね、という言い訳でもあります。笑

*****

さて。香港のトレッキング。
個人的な興味の赴くまま、なぜ香港にトレッキングコースが作られてきたのか?という疑問をたどってきた。
岩山だらけの寒村だった香港島。イギリスの統治が始まり、人口増加に伴う水不足を補うための貯水池が各地に作られ、保水目的で周囲に大規模な植林が行われた。それにより森林面積は、香港全体の4割にまで広がった。

ここまでなら、現在でも発展途上国の水不足解消や環境保護を目的に、世界各地で取り組まれていることだろう。しかし、イギリス人はその緑化したエリアに縦横無尽にトレッキングコースを作ろうと試みた。この発想、他の民族にはなかなかないんじゃないだろうか?と思う。
当初わたしは、それは「歩くこと」が好きなイギリス人だからこそ、イギリス人のために作ったのだろうと思っていた。

甲南大学教授で英文学者の中島俊郎さんという方が「ウォーキングの文化史~イギリス人はいかに歩き、何を生み出したか~」という論文を書いている。甲南大学が学術研究などの発展に貢献するため、ネット上に無償公開している雑誌『甲南大學紀要 文学編 164(2013)』へ寄稿されたもので、イギリス人と「歩くこと」についての歴史的な考察がとても興味深い。

それによるとイギリス人は、ときに巡礼のために、ときに名声や思想のために、そして詩作や風景画を書くためにと、積極的に歩いてきた民族のようだ。
18世紀半ばの産業革命以後は、中心地が都市化すると街中を徘徊する「都市歩き」が流行し、鉄道による長距離移動が可能になると、汽車を使ってロンドン郊外へ出たあと、わざわざ歩いて街へ戻るという「日曜遊歩会」など、歩くことを目的とした同好会ができ、盛んに活動し始めた。(わざわざ歩きたい気持ちは、ALL Tangoとしてもちろん共感する。)
さら20世紀に入ると、体力を誇示するための競歩的歩行大会が開催されたり、アルプスへの登山熱とともに山に登ることを目的とした歩行が大ブームとなった。モンブラン登頂に成功したアルバート・スミスは、その模様を舞台化し大成功をおさめたという。

そんなイギリス人の歩く文化の集大成とも言えるものが、個人の私有地でさえ市民が歩く権利を認める「パブリック・フットパス」、すなわち「歩行者に通行する権利を保証する道」であり「歩くことを楽しむための道」である。1932年には「歩く権利法」として法制化され、現在ではイギリス全土に20数万kmにも渡ってフットパスが張り巡らされている。
戦後1949年には「国立公園・カントリーサイドアクセス法」が制定され、人が定住していようと個人の私有地だろうと関係なく、自然を保護し市民の通行権を保障する国立公園があちこちに作られた。個人の土地所有権が確固たるものとされている日本では、まず思いつかない権利であり法律ではないかと思う。

​そんな「断固歩く」イギリス人だからこそ、植民地化した香港でも歩かずにはいられないのだろうと思っていた。無いならば作れとばかりに、トレッキングコースを整備したのだと思っていたのだが、どうもそうではなかったらしい。これがまた興味深いところだ。

1976年、中国大陸で起こった文化大革命の影響で、香港人労働者や学生による反イギリス暴動が勃発した。警官隊や軍隊が投入され数ヶ月ののちに鎮圧されたものの、死者は50人以上、800人以上が負傷する事態となる。イギリス政府は、こうした若者のエネルギーを他へと向かわせるため、1971年、貯水池の一角にバーベキューサイトを作り、試験的にレクリエーション施設を設置して若者を呼び込んだ。
これが功を奏して人気を博すると、1976年には「カントリーパーク条例」が制定され、カントリーパーク(都市公園)に制定されたエリアには植林を進め、園内を歩き回れるトレッキングコースが整備されることとなる。もちろんこれは、イギリス本土での「パブリック・フットパス」や「国立公園・カントリーアクセス法」の制定、イギリス人の歩く文化が基盤となったことは言うまでもないが、今日に至るまで愛されてきた香港トレッキングコースが作られた直接的なきっかけは、この香港の政治的な緊迫状況にあったようだ。[次回に続く](MK)
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